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最高裁判所第二小法廷 昭和28年(オ)777号 判決 1955年10月28日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人山田節三、同佐藤久四郎の上告理由について。

原判決の認定するところによれば、第一審裁判所では、弁護士との申合せに基き、弁護士に対する書類の送達は、送達すべき書類を送達報告書と同封して裁判所構内弁護士控室に常勤する弁護士会の事務員に渡し、同事務員を通じて当該弁護士に交付し、その送達報告書に弁護士が書類受領者としての捺印を施して裁判所に返送する方法により、これを慣行として多年実行して来たものであるところ、本件でも、右の方法に従い、第一審裁判所の松原雇員が送達事務を取扱う書記官の命を受け、控訴人等(上告人等)訴訟代理人たる弁護士山田節三に送達すべき第一審判決の正本を、送達報告書及び予納郵券の残りと共に同封し、封筒に同弁護士を表記して昭和二七年一一月一七日、裁判所構内弁護士控室において前記弁護士会の事務員に渡し、同弁護士は、当時、その事務員を通じてこれを異議なく受領したこと、送達報告書は弁護士から数日内に裁判所に戻される例であつたのに、本件ではその返戻がないので、松原雇員は同年一二月中旬頃山田弁護士に催促したところ、同弁護士は判決正本を受取つていることを認め、送達報告書を紛失したとの返答であつたこと、その後、当該送達報告書の作成につき、同弁護士が送達の日を同年一一月一七日当時とするものに対しては受領者としての記名捺印を承諾しないので、やむを得ず、第一審裁判所は同弁護士の要求する昭和二八年一月二二日を送達日とする報告書を作成し、同弁護士の記名捺印を得て本件記録に編綴したもので、その送達の日附昭和二八年一月二二日は実際の送達日附に合致しないことが明らかであるというのである。即ち、右事実関係から見ると、本件第一審判決正本の送達は、民訴一七〇条一項三項、一六三条の趣旨に鑑み、同裁判所書記官の命を受けた右雇員から昭和二七年一一月一七日同裁判所構内の弁護士控室において同控室に常勤する右事務員に対して有効になされたものと認めるのを相当とする。原審は、右山田弁護士が右書類を現実に受領したときに、有効な送達があつたものの如く判示しているけれども、この見解は採用し難い。しかし、本件の送達が昭和二七年一一月一七日有効になされたことは右のとおりであるから、本件につき、昭和二八年二月二日に提起された控訴を不適法として却下した原判決の判断は、結局正当に帰し、論旨は理由がない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 池田克)

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